冬コミ直前! 蝉ミキサーインタビュー!
──蝉ミキサーさんこんにちは。今回のインタビューでは「あの素晴らしい暴力をもう一度」に寄稿した漫画「赦免花の蕾」の魅力をお伝えできればと思います。そもそも、合同誌に参加したのはどのような経緯が?
作画担当の山像さんに「原作書きません?」って聞かれたので、「はい、書きます」と……。
──え? それだけ?
はい、それだけですね……。まあ、元々架空の邂逅漫画とか描いてましたし、なんとなく漠然と伏線みたいなものはあったんじゃないかなと思います。
日記を描きました。@semimixer_botこと蝉ミキサーさんにはご協力頂き幸甚の至りでございます。 pic.twitter.com/JZaXvRcq5Z
— 山像 (@i_yamagata) 2014年12月16日
架空の邂逅漫画。二人が実際にあったわけではない。架空の会話であってゆゆ式心から好きです。大好きです。
キャラクターではなく物語の二次創作
──それでは「赦免花の蕾」はどのようなところ魅力だと思いますか?
随分と漠然とした質問ですね(笑) そうですね……魅力、かどうかは分かりませんがキャラクターの二次創作ではなくアニメ「アイドルマスター シンデレラガールズ」 (以下、シンデラガールズ)の二次創作なところが少し市場でレアなところかなと思います。もっとも、あんまり同人誌界隈のこと知らないので予想で話してますけど。買う側としてコミケットに参加したことありませんし。
※コミックマーケット91開催前の話です。自分の本を貰いに行きました。
──物語の二次創作ということをもう少し説明していただいていいですか?
漠然とした印象ですけど、二次創作の多数派は「このキャラが好き! このキャラを描くぞ!」みたいな感じなのかなという印象があるんですけど、「赦免花の蕾」はそうじゃないんですよ。シンデレラガールズに対する私なりのアンサーとして書きました。キャラクター愛ではなく作品愛ですね。例えば、シンデレラガールズを観ていて「アイドル同士やプロデューサーとの繋がりの中で島村卯月は答えを見つけるけど、ファンの存在はどこに位置づけられるのか」とか「プロデューサーと常務の方針は本当に排反で共存はできないのか」とか疑問に思ったんですよ。もちろん、触れるべきだったと言っているわけではなく、あの物語のテーマはそこにはないので触れなくていい部分だと思います。でもそういう方向から語ることもできるな、と。
──なるほど、シンデレラガールズの別の側面ということですね。
そうですね。だから、この物語はまず名も無いファンの視点から始まります。出来事事態は異なっていますが、〝ニュージェネレーションの他二人が他の活動で、キラキラすることに焦燥感を覚えてる島村卯月〟というアニメ後半のテーマを、ファンの視線から語り直す、という物語です。そして、島村卯月の方針についてプロデューサーと常務の意見が分かれて揉めるという展開もあります。
──アニメを観ていて気になったところに対する答えなんですね。だから、私なりのアンサーとして書いたと。
シンデレラガールズと高瀬舟は親和性が高いと思っています
──告知記事を見ると高瀬舟が出てくるようですが。これは森鴎外の高瀬舟ということでいいんですよね?
そうですね、その高瀬舟を下敷きにしています。
──なんだかそれだけ聞くと随分と不思議に聞こえますが。
まあ、正直原作を書かないかと言われたときにちょうど再読していたという事情ですね(笑) その時の自分の中で興味のあるテーマだったので。
──なんだか随分と行き当たりばったりに聞こえますが(笑)
とはいえシンデレラガールズと高瀬舟は親和性が高いと思ってますよ。高瀬舟のテーマの一つに知足(自らの分をわきまえて、それ以上のものを求めないこと。分相応のところで満足すること。「老子」33章の「足るを知る者は富む」から)があります。それに対してシンデレラガールズは渋谷凛が足りないことを知って一歩踏み出すところから始まるわけですから。そしてその後も「キラキラしていない」「キラキラする」と現状を変えていくわけですね。
──なるほど、真逆の話だからこそ親和性が高いと。
ただ逆なわけではなくて、足りないことを知るだけじゃダメで「思ったよりもキラキラできてなくてショックを受けるけどそれでも見ているファンの方がちゃんといる」だとか、あるいは後半の島村卯月の展開だとか、ちゃんと今足りていることを知ることの大切さも描かれていますね。それがあのアニメのテーマだというつもりがないですが、その側面からも語れるぞ、と。それだけの強度がある物語だと思っています。
──色んな側面から語ることができるということですね。
シンデレラガールズには人生の大切な全てのことが詰まってる、でも多くの人がそれに気付かないんだ。
──(笑)
本当はもっと橘ありすを出したかった
──初めての漫画原作ということで何か困ったことなどはありますか?
そうですね。元々、どちらかというと文章書きなのでなんでもかんでも台詞で説明しようとし過ぎていたと思います。「事件について書いてある新聞をアップで描こう」と言われたときとか「なるほど! 漫画だとそんな手が!」と目から鱗が落ちる思いでした。今思えばもう少し山像さんにふんわりした形で投げて向こうの裁量で演出する部分を増やした方がよかったかもですね。
──漫画と小説の違いですか。
はい、それに最初に書いた原作だと、台詞が全体的に長くてかなりバシバシ削りましたね。私リアルだと間違いなく噛むような長ったらしい語りをさせるのが好きなんですよ(笑)
──揉めたりとかはしなかったんですか?
基本的にはお互いにお互いのことを尊敬して上手いことやれていたと思います。ただ、一ヶ所だけ揉めたところがあって「原作の渋谷はこんなことを言わない!」「漫画としてはこっちのほうが面白い!」みたいな話をしました。
──それでどうしたんですか?
作品として世に出す以上、一切の妥協無く最善手を探りました……なんて答えられたらよかったんですけどね。時間の関係もあり漫画として面白い方を選びました。その結果もあり面白いものができたと思っています。元々、原作を引き受けるときに「私のこだわりと漫画の面白さが衝突したら容赦なく私のこだわりを切り捨てるのが引き受ける条件だ」というようなことを言っていましたしね。
──それもすごい話ですね
ええ、狙ってたわけじゃないですが。なので二人で伏線回収だとはしゃいでましたね。
──最後に何か言っておきたいとかはありますか?
蝉ミキサーと山像、この二人が組む以外の契機ではこの世界にまず現れなかっただろうという二人の個性が混ざった漫画になったと思っています。私か山像さんのどちらかが好きなら買って損はないと思いますよ。
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